ちぇんちぇー
佐野権太

先生を壊したら
新しい先生が出てきた
この先生を壊しても
きっと同じだろう
マトリョーシカ
そういえば
前よりもいくらか小振りである

小さいくせに
目の中に入れても痛くない
などと
親のようなことを言う
目の中に入るのはおまえだ

しばらくたつが
裏側に回り込んだらしく
音沙汰がない
膝でも抱えていじけているのかと
目玉をぐりぐり動かせば
きゃっきゃとはしゃいで
始末に負えない

もっと大きな人間になれと
ふんぞり返っているが
いまいち説得力がない
そもそも
先生という名前が胡散臭くて
素直になれないので
別の呼び方をしてみる

ちぇんちぇー
毎日を生き延びるだけでは
満足できない僕たちが
デジタルな世界で生きていくには
どうしたらいいですか

考え込んでいるのか
寝ているのか
鼻風船が
パチンと弾けて
逆転の発想だよ
と、禅問答のようなことをいって
本当に寝てしまった

何も望まず、流れるままに
そういうことだろうか
そんなふうにできないから
聞いているのに
教えてほしいことは
山ほどあるのに

ちぇんちぇー
自由ってなんですか
思うように生きていますか

ちぇんちぇー
山は死にますか
海は死にますか
風邪はどうですか
君はどこですか
僕はまだ
そこにいますか







自由詩 ちぇんちぇー Copyright 佐野権太 2013-04-03 17:52:05
notebook Home