キャッチボール
nonya
何が面白くて
大の男が
キャッチボールなんてやるのだろう
君と僕は
公園の片隅にある鳥篭の中で
黙りこくったまま
ひたすらボールを投げ
ひたすらボールを捕った
君の直球は
若い部下に常識を教えるのに
疲れ果てて
捕りづらいシュート回転になり
僕のスローカーブは
嫁と姑の穏やかな戦争に
飽き飽きして
情けないショートバウンドになり
その度に
君と僕は
手の内を見られた気恥ずかしさから
ニカッと笑い合った
泥だらけのボールは
君と僕の境界線の上を
何度も何度も往復して
記号のような言葉より
もっと君を伝え
図形のような笑顔より
もっと僕を語った
何が面白くて
大の男が
キャッチボールなんてやるのだろう
その理由はたぶん
ボールを握る手のひらと
グローブの下の手のひらが
知っている