祭りの前
……とある蛙

その日のことは忘れない
一瞬の沈黙の痕
スローモーションのような動きで
逃げ惑う人々
サバイバルナイフ片手にそれを追い回す悪意
全ての音は止まっている
無音の中の惨劇は
それを取り巻く大多数の
傍観者を当事者とし、逃げ惑う


娘も息子と通っていた小学校の通学路
神田は変わった
秋葉原は変わった
多くの店舗が風俗とオタク文化の発信地に
それでも神田明神の大祭はやってくる
未曾有の震災に自粛して
四年ぶりに復活その矢先老舗の火災

チェック柄の子供たちはもういない
あの交差点に夜半佇む
キャスター付きの旅行鞄を転がす
髪の茶色の女の子達
派手な化粧の女学生
髪を染めた男の子達

高層ビルの一部分が
悪魔の影を映し暗くなっている。


自由詩 祭りの前 Copyright ……とある蛙 2013-03-25 16:00:14
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