祭りの前
……とある蛙
その日のことは忘れない
一瞬の沈黙の痕
スローモーションのような動きで
逃げ惑う人々
サバイバルナイフ片手にそれを追い回す悪意
全ての音は止まっている
無音の中の惨劇は
それを取り巻く大多数の
傍観者を当事者とし、逃げ惑う
娘も息子と通っていた小学校の通学路
神田は変わった
秋葉原は変わった
多くの店舗が風俗とオタク文化の発信地に
それでも神田明神の大祭はやってくる
未曾有の震災に自粛して
四年ぶりに復活その矢先老舗の火災
チェック柄の子供たちはもういない
あの交差点に夜半佇む
キャスター付きの旅行鞄を転がす
髪の茶色の女の子達
派手な化粧の女学生
髪を染めた男の子達
高層ビルの一部分が
悪魔の影を映し暗くなっている。