鋭角
はるな

二等辺三角形をすべり降りるとき
君はまよわず左を選ぶだろう
ひと息つくときにはかならず右肩をもたせ掛けるくせがあるから

そうとは気づいていないかもしれないけれど
すでに君とは出会っている
さくら、つつじ、えんどう
飛魚のむれがわずかに北上する季節

(とびうおの、
かなしい習性を
君はそのうち
愛と呼ぶ)

あまい歌は耳薬
いつまでも気づかない人びとを置いて
君はやすやすと辿りつく
風や雨や山や色を
自分の体みたいに使って
三角形の左側をなめらかに下ってくる
そうとは気づいていないかもしれないけれど
君には何度も出会っている

いまは深海魚みたいに眠っておいで
透き通って丸まって
気のすむまで泳いでおいで
そしていよいよというときには二等辺三角形の左がわを選んで
わたしに鋭角をつくっておくれ



自由詩 鋭角 Copyright はるな 2013-03-22 15:30:09
notebook Home 戻る