沼しかない街
左屋百色

右へ行くと海があり左へ行くと詩があり
ます。そんな街に住んでます。近所の沼
で子供たちは言葉を沈めて遊ぶ。強風。
泥だらけの手を見せなくていい。そろそ
ろ雨が降るなんて言わなくていい。何も
知らなくていい。大人の言葉は全部邪魔
。いらない。道に迷え。教えてやる。
わたし100年前から詩人だから

手のひらに海を乗せクラゲを育てる。そ
んな時間の使い方。古い。ベニヤ板と鉄
クズと言葉でつくられた城。古すぎる。
詩人だけが入れない城。そこから見える
のは沼の反対側。左が海で右が詩。あれ
もこれも同じ。同じです。詩がつくれな
い。詩をつくれ。教えてやる。
わたし100年前から詩人だから

この街に春がきたら言葉で海を囲む。そ
れは本当か。詩に意味がないなら行く所
は沼しかない。城は古い言葉が散乱。誰
もいない。ゆっくり沈む。城。ゆっくり
吹く。風。よく似合う。聞いて恥ずかし
くなる言葉。何回でも言う。ありふれた
言葉。もっとありふれろ。教えてやる。
わたし100年前から詩人だから


自由詩 沼しかない街 Copyright 左屋百色 2013-03-21 17:15:29
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