駅のホームと立ち食いそば屋
灰泥軽茶

駅のホーム
立ち食いそば屋で
かき揚げそばをすすりながら
おにぎりをほおばる

小学生の高学年
夏休みなどに入ると
私はひとりで新幹線に四時間ほど乗り
田舎に帰省していた
とても酔う体質でさらに緊張もしていたので
道中何も食べずに我慢して
歯を食いしばるような
長い新幹線の時間を終え
さらに鈍行列車に乗り換える間に
いつもかき揚げそばを食べていた
胸いっぱいに吸い込む新鮮な空気に
そよそよ運ばれてくる美味しそうな匂い

それは何よりものご馳走で
今でもつゆの匂いとホームの匂いを嗅ぐと
ぐうっとお腹が減ってしまい
ふらりと暖簾をくぐり入ってしまう

だから私は静かで風情のある蕎麦屋で
香りと弾力のある蕎麦をすするのも好きだが
あと五分を気にしながら
勢いよくすするやわやわそばも大好きである





自由詩 駅のホームと立ち食いそば屋 Copyright 灰泥軽茶 2013-03-19 01:58:00
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