わたしたちは
いつだって
傘のかなしみを知らないのです
雨は水のふりをしているけれど
あれは
悪魔なのです
今は悪魔であるけれど
もとは穢れなき天使だったのです

傘は特別製の防御服など持たず
薄っぺらいビニイルで
そんな世界の不条理を
無言で受け止め
わたしたちを守っているのです

カサノ
カナシミヲ
シッテクダサイ

でなければ
ずたぼろになった傘の骨が
あなたを傷つけてしまうかもしれません
傘は天使なのです
悪魔になってしまう一歩手まえで
やっと
とどまっているのです

開いた傘が乗り物に見えたのは遠い昔
わたしが空さえ翔べそうなくらい軽くて
平和だった頃の思い出です
２０１３年　春の大地に
閉じられた傘が
突き刺さっています

未遂の凶器にみえてくるのです