スネオ
nonya


風の変り身に
逆立つ産毛はあるが
人の変り身を
捉える触角はない

好奇心の玩具は
すぐに揮発させてしまうくせに
邪推の深海魚は
いつまでも対流させている

賞賛の燃料があればどこまでも
上昇できると思っているようだが
その推力は案外貧弱で
いまだに大気圏を破ったことがない

言葉の弾道ミサイルには
屁理屈の地対空ミサイルで応戦するが
語彙の致命的な少なさに
すぐに白旗を揚げてしまう

仲間はずれが嫌いなくせに
ところ構わず毒を吐き散らすから
目配せと嘲笑の果てに
朝の路上に取り残される

ひとりになるのは好きだけど
ひとりにされるのは怖いから
ときどき匿名の非武装地帯で
猛毒の花を咲かせているらしい

そんなスネた奴が
僕の鳩尾のあたりに
たぶん二人以上は住んでいて
僕に胃腸薬を常備させている




自由詩 スネオ Copyright nonya 2013-03-16 12:36:10
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