生命、
田園
生命とはなんだろう。
父母を―私がまだ光だったころ―なんとなく選び、
生まれてからする「一つのテーマ」を神様からもらって、
おぎゃーと生まれてくる。涙。
年は残酷な程に大急ぎで通り過ぎるが、
その中で出会ったり別れたり、
惚れたり嫌悪したり、
渦中では地獄だったことが、時をへて笑い話になり、
目じりにしわができたりする。
いづれシミの数やらなんやらが気にならなくなり、
ただ、生きてきたという現実だけが残る。
生きてきた。
とは、なんだろう。
あまりに漠然として、それでいて現実的すぎる。
間違いを犯し、懺悔をすることもある。
過ぎた日々はそれをゆるさなかったりもするが、
それでも私は変わるしかなかった。
大きなことを成し遂げることもある。
それが小さなことだと知っている私は、
それでも心が休まったりする。
生命とはなんだろう。
地獄、極楽。
きっとそんなもんじゃない。
生命とは、奇跡。
人という形こそ選んではきたが、
人も山羊も虎も、
ただ生きている。それこそ奇跡。もしくは偶然、神の遊び。
そんなものに意味を感じる必要はないのかもしれない。
だが幼い私は疑問を持ち続ける。
なぜ生命を貰い受け、
この日本という小国に生まれ落ちたのか。
私が成すべきはなんだろう。
子供をはらむことかもしれない。
独身で趣味や資格習得にいそしむかもしれない。
そして死ぬかもしれない。
心に病を抱えてしまった私は、
絶望と呼べるのか分からない、不条理に出会ったりしたが、
昔、おそらく経験している。
私が生まれる前の私として。
生命とは、そういった幸不幸なにもかもで、
おぼれ遊び泳ぎ休み、
充分です、と心から―魂が―思ったとき、
終るものかもしれない。
未熟な若人、成熟した初老。
なにもかも対等で、なにもかも不平等だ。
しかし、
生命は、
甘く見てしまえば平等なもののように感じた。
今日、父の肩をもんでいて、
そう思った。