サンドパイプ
梅昆布茶
化石少年は砂岩の中にある海中生物の
痕跡に魅入られていた
数十万あるいは数百万年の時を経て
無名の海底生物の生きた証左が地の中の眠りから
主亡き痕跡という奇跡の造形のままよみがえる
それは僕たちの祖先であったかもしれないナメクジウオの
かなしい涙のあとあるいは
考古学という美学のほんの一端のささやかな
息継ぎなのかもしれない
ベスビオス火山で一瞬にして化石化したポンペイ市民の生活
僕たちはいまなんの堆積によって
その生きた形を
存在空間を証明できるのだろうか
それをいつだれが掘り出して
博物館の一隅にでも
展示してくれるのだろうか
すべての生体活動における
環境的抵抗因子に対する
生体の戦いの証が
生痕という考古学的気配に
すべての系統樹の樹液が溢れ出て
流れ込むそんな露出した砂岩の
かつて華やかだった生命圏の
風化したカサコソした痕跡という
サンドパイプという生命のひとつの歌の破片を
少年は宝物のようにきっと
掘り当てるのだろう