すごいスピードの鳥
よしたか



雨の一粒一粒が誰かの愛なんだってイメージできたら
一身に浴びる人は拍子抜けするくらい幸せなんだろう

すごいスピードで飛んだ鳥!
かれにとって街は一瞬通りすぎた愚痴みたいなものか
すごいスピードの鳥っていないことなのか
寂しいことか 愉しいことか
子どもの手で固められた雲が西の空に流れていく

どこかのアダムたちが神様にプロポーズ
巨大で豪華な花束を宇宙に飛ばした
それは重力という考え方にひっぱられて落ちていった
もちろん花柄の震えが起こり
いくつものかけがえない水から波が生まれ
語りつくせないただひとつの壁は現れた
壁に弾きかえされた飛沫を浴びると
持っていた言葉はみるみると滲んだ
それが僕らのラブソングの歌詞だ
そしてどこかのイブたちも神様に恋をした
緻密で丹念なチョコレートを宇宙に飛ばしたんだ
それは大気圏で溶けて
地上はほろ苦い義理になった
分厚い繭で本命を夢見る彼女の起源よ


固まった雲は流れさった
低空の自衛隊機が三機
トランプの渡り鳥のように飛んでいる
感受性と仲良くなれない日は
傘はお気に入りのものがいい

ポツリ ポツリ 雨が降り出し次第に強くなる

あるいは太陽の背けたくなる目力だとして
あるいは満ち欠けを瞬時に行う月のウインクだとして
凄まじい愛のイメージは他愛もなく 大切な愚痴をくだらなくするんだろう

大人の手でつくりかえられた雨雲が轟々と集まる

土砂降りの愛憎を浴びて
気取っためちゃくちゃを踊った
おおきなミジンコになったよ
ちいさな巨人になったよ
流れ星の逆作用で放り投げたビニール傘
誕生日ケーキを一瞬で一億個食べる鳥がつかみ彼方へ飛び去った
僕はおとずれたことさえわからなかった

もうすぐ1日が終わる
さあ 夢をかえしてもらおう
とても遅い亀が頭に僕らをのせて
美しく巨大な氷の微笑みの上を歩いている




自由詩 すごいスピードの鳥 Copyright よしたか 2013-03-09 22:51:35
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