ハイウェイゾンビ
魚屋スイソ

ゾンビごっこをやってて、ひとりで、はじめはショッピングセンターのショーウインドウを叩く真似とか、駐車場のフェンスを乗り越えようとしてたら踏まれて起き上がれなくなってる真似とか、けっこう盛り上がってたんだけど、そのうち飽きて、きみは笑わないし、でもやめどきがわからないまま続けているうちに、板についてきたというか、自分はロメロ仕込みだから、オブザデッド系のゾンビしかできないんだけど、なんとなく美しいゾンビ像に近づきつつあるのがわかって、ほら、これから川わたるよ、って、ザブザブ、

抱きしめたときの、電池ケースの感触がきらいだと言って、投げ返されたピカチュウのぬいぐるみを、セルフで鳴き声つけて撫でてると、ハイウェイっぽいやつやろう、おまえ、いまからあたしのマシンな、3800CCくらいの、ほんとはメタリックブルーがいいけど、おまえ黒い服しかないし、黒でいいよ、ピンクはダサいからやめて、はやく脱いで、おれはアニメの方じゃなくてゲームの方の、大谷育江の方じゃなくて波形メモリ音源の方の、ピカチュウの鳴き声を模索している最中だった、あれはピカチュウなんてかわいい発音してるようじゃだめだな、ギガデュウくらいやらないと足りないね、

どこぞのJとNじゃあるまいし、恥ずかしいからやりたくなかったんだけど、仕方なしに、きみを背にのせて、ゾンビごっこでもなく、ピカチュウごっこでもなく、ハイウェイごっこに興じながら、ドラクエ7のリメイクの、くさったしたいの走り方を思い出してたら、少しテンションあがってきて、でもブオーンとかいうと怒られるから黙って、きみも黙ったまま、ふたりでハイウェイを走った、レヌール城を目指した、通信ケーブル、ほしいな、

自画撮りオナニーもののAVに入ってる、車の走行音が好きだった、ヘッドフォンしてると、パンふられたエンジン音が耳を抜けていって、その中心にあえぎ声とバイブローターの震動音があるのが好きだった、シオンタウンに着いたらすぐ自転車にのるきみは、いまおれの上で目を閉じて、夜風にあおられている、ゴーストを進化させたことのないおれは、ハイウェイの上空がうすむらさきになっていくのを見ていた、もう3月だった、今年も桜の木の下で、死体は見つかるだろうか、きみがニフラムで消す前に、本場のゾンビのテクを少しでも盗もうと思った、


自由詩 ハイウェイゾンビ Copyright 魚屋スイソ 2013-03-07 04:17:03
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