幸福と髭野原と時限爆弾
阿閉真琴

「ねえ、この身体のいったい何処に住めるっていうの?」
「身体に住むのかい?」
「そうよ、髭があれば荒れ野原だし、屋根もないし」
「眉毛の中はどうだろう。髪の毛の中だとか」
「不潔よ」
「でも、人類も最初はそうだったんじゃないの?なにもない地球で」
「そうね地球も隣の惑星から質問されていたかもね」
「人間は地球から材料を採りだして家をつくったんだよ」
「じゃあ、私もあなたの皮膚をえぐって家をつくればいいのね」
「ぼくの身体に住むのかい?」
「そうよ、それこそが私の幸せよ」
「人は身体に時限爆弾を抱えているんだよ」
「それは地球も同じよ。爆発するときは一緒よ」
「教えられないよ」
「何を?」
「時間を」
「いいわ、私はあなたの身体中に家を建てる」
「それは優しい行動かな?」
「人類の本能的な行動よ」
「ぼくはきみの中に住みたいよ」
「私の上でなくて?」
「きみと同じ惑星になりたい」
「いやよ」
「どうして?」
「髭が痛いわ」


自由詩 幸福と髭野原と時限爆弾 Copyright 阿閉真琴 2013-03-04 10:40:23
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