家族の音がする
そらの珊瑚

一枚の紙を
折りたたんでいく
半分に折れば
にぶんのいちの面積の
しかくが出来る
そこには
重なる相似形

出来上がりの形を
思い描きながら
そっと指で伸ばしていけば
ちいさなさんかく
こびとがかくれんぼ出来るくらいのすきま
対角線を越えてやってきた点
やがて
かみふうせんのカタチになる

「東京家族のチケット
 午前中のものは完売いたしました」
広島八丁座は家族を求める人でにぎわっていた
スクリーンのなかで架空の家族が生きている
どこかにいるであろう家族の姿
めぐり合う不思議
夫婦になる不思議
親子になる不思議
同じ血が流れていても分かり合えない不思議
同じ血が流れているからこそ ぶつかってしまう不思議
思うとおりにならない人生の不思議
離れていても どこかでつながっている不思議
人がまるであるならば
家族はどこかで重なっている
まるとまるが重なって縁で結ばれる
光にかざせばそこだけ色は濃い

四角い紙が最後にたどりついたのは
まる
わたしの息で
まるくふくらみ
てのひらのなかで
かるく飛んだあと
重力に引きずられて
落ちていった先は
木琴
かみふうせんは
まるい真円のマレットになる
それはやさしく毛糸で巻かれることだろう
無茶苦茶にたたいても
木琴が壊れてしまわないように

そんな家族の音が聴こえる不思議

そして
最後には誰もが独りで逝く不思議




自由詩 家族の音がする Copyright そらの珊瑚 2013-03-04 08:46:42
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