メトロポリス
梅昆布茶

マリアは涙を流している
階級のなみだ
金属製の胸には革命の歯車が
コチコチと廻る

フリッツラングの見たニューヨークは
セピア色の未来

摩天楼には愚かな文明がのさばって
素朴な世界を圧迫している

オーバーオールを着た機械工学が通りを走りまわる
人々は微細な星くずのように
その谷間を流れている

チャーリーチャプリンはモダンタイムスを読んだか
いまでも路地裏の輪転機は
新聞を印刷し続けているのだろうか
労働者の新聞を

ヒューゴは時の鍵を手に入れる
秘密のなかの秘密
機械人形にこころを与えるもの
それが時の鍵

そして機械人形は
膨大な歴史書を書き始めるのだ
時にそれは
ネクロノミコンとも呼ばれる

それは宇宙の設計図
こころや身体を組み立てる原理の
解説書なんだ

ワトソン君はけっこう忙しく
探偵をアシストしているが
霧のロンドンブリッジは遥かに遠い

マリーアントワネットは断頭台の上で
故郷のオーストリアの子守唄を聴いただろうか
それとも

ただの風の音

今日も阿呆船は狂気をはこんでゆく
いつかは子午線をも超えて
北極圏のオーロラをみるにちがいない

その時僕達はあの懐かしい
メトロポリスを思い出すのかもしれない













自由詩 メトロポリス Copyright 梅昆布茶 2013-03-03 20:04:36
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