戯曲(習作つづき4)
星☆風馬
せむし
せむし「ふりほどいたお下げの髪が春の風になびいているよ
豊かな乙女の黒髪が君の笑顔とよく似合う
白いシャツにかくされた実る果実の先っぽに
スカートの下にかくされた濡れて黄ばんだパンティーに
甘い酸っぱい君の匂いが薫っているよ
風は舞う、青空のした恋に舞う
その唇と唇がふれあうと、そこは2人だけの別世界
惹かれ、焦がれ、求めあう
ほとばしる益荒男たちのみなぎる力
その全身で受けとめて感じているのは乙女の体
君という真っ白になったキャンパスに
今日も若さのしるしはぶちまけられる
ああ、悩ましきかな、青春よ
ぼくにもほんの少しだけ、分けてください、そのキャンパスを
絵の具はぼくが用意するから」
母登場。せむし、物陰にかくれる
母 「ほんっと、浜口先生ってサイッテー!何回言っても分からないのね。バカよ。本当に。わたしの名前は三浦トモコだって言ってるのに、いつも、三浦セイコー。何回言っても、三浦セイコー。三浦セイコー。何よそのセイコーって。しかもそこだけアクセント強調しないでほしいわ。もしかしてファンだったの?浜口先生って。
(歌、松田聖子「青いサンゴ礁」)ああ〜、わたしの恋は南の風に乗って走るわ〜
ああ〜、青い風〜〜〜〜
松田セイコじゃないわよ。わたしは。三浦トモコ。でも与志くん、今日はきっぱり先生に言ってくれたわ。「先生、三浦さんは三浦セイコーじゃありません。聖なる子と書いてトモコと読むんです。三浦トモコ、それが三浦さんの名前です。三浦セイコーなる人はこのクラスにはいません。よって、三浦さん、今度から先生が三浦セイコーと呼んでも返事しなくてよろしい。いいですね。ハマグリ先生」あー、みんなウケたわー。わたしが先生に何回言っても効き目なかったけど、与志くんが言ったら先生もガツンね。わたし、うれしかった。与志くん、ありがとう」
父登場
父 「おう、三浦セイコー!」
母 「もう!与志くん、ひどい、、、」
父 「すまんすまん。三浦、そんな泣くなよ」
母 「泣いていません!」
父 「なあ、三浦。ちょっと相談があるんだけど聞いてくれないか?」
母 「なあに?」
父 「実は、、、今度の学園祭で君にひと肌脱いでほしいんだ。詳細は今詰めているところなんだが、つまり、、、」
母 「なんでもするわよ。与志くんの頼みなら」
父 「これは今回の学園祭の目玉。クラスでも一部の奴だけにしか知らせていないシークレット・サプライズなのだが、、、」
母 「何なの?」
父 「その、なんというか、、つまり、劇をやるんだが(父、土下座)三浦!おれのためにひと肌脱いでくれ!つまり、服を全部脱いでくれ!お願いだ!」
母 「全裸!?」
父 「そうだ!体育館の舞台上で全裸になってくれ!」
母 「ええーーっ!そんな、わたし退学になっちゃう」
父 「ならない」
母 「全校生徒の前で全裸?そんなことしたら、わたし、恥ずかしくて死んじゃうわ」
父 「死なない」
母 「みんなに何って言われるか、、、」
父 「いいや。多分、君は英雄になる」
母 「ええ、、、ちょっと待って。少し考えさせてほしいわ」
父 「三浦、お願いだ。我々のシークレット・サプライズ・ゲリラ演劇に手を貸してくれ。全校男子のオナニー解禁。校長の大目玉はおれたちが食らうから」
母 「うん。わかった。でも少し考えさせて」
父 「そうか。ありがとう!君は恩人だ。今夜10時、部屋に行くから、また窓のカギを開けておいてくれ。今晩は大丈夫だろ?そこで答えを聞かせてくれ」
母 「ええ。開けて待ってるわ」
父 「それじゃあおれはまた打ち合わせだ。行ってくる。さようなら」
母 「さようなら」
父退場、せむし現れる
せむし「でぇへへへ。聞きましたよ。今夜も与志くんは朝帰りですか?別にトモコさん、あなたを責めているわけじゃない。青年よ大志をいだけ。アーサー・クラーク博士も「幼年期の終わり」で言っておられる。青年よド助平たれ、と。乙女であればだれでもドン・ファンに憧れるのは無理もない」
母 「薫くん。わたしたちそんなんじゃないから。わたしは不純異性交遊はしていないつもりよ」
せむし「いやいや。勘違いしてもらっては困る。あなたを責めてはいない。ただわたしはおすそ分けが欲しいだけです。その、、少しだけでかまわない」
母 「ダメよ。与志くんとわたしはいいなずけよ。将来の約束を交わした仲なの」
せむし「そうですか。あなたは与志のフィアンセ。親も公認のカップルというわけだ。わたしの入り込む余地は全くないと」
母 「与志くんに相談なさい。いつでもわたしの部屋の窓のカギは開いてるわ。でも、わたしにも拒否権はあるのよ」
せむし「わかってますよ」
母 「今夜、彼が来るときにあなたもいらっしゃい。待っているから」
せむし「それはありがたい。そこで話をつけようか」
―暗―