冬の虜囚
寅午

降りしきる雪
積雪してゆく雪
夜がもう一回りしてきたように空はくらがり
冬の沈黙がぼくたちの町のうえに
いくえにもみえない層となって積みかさなっている

雪は不断に降りつづき
町は白の純度をまして
建物も、ひとも
モノクロサイレント映画のようになる

謙信公の像のうえにも
協会の十字架にも
川のくらい水面にも
雪はふる
冬のきびしい教えを伝えひろめるように降りつのる

せつせつと教えをたれる雪のしたで
万物はなべて、うつむいて沈黙をまもっている
吼えたける風のほかは
だれも口をさしはさまず
いつまでも冬の言葉を聞きながしている

町ゆく人影はまばら
靴底には3,4日まえの雪がこびりついている
心のひだにまといつく
白いかげをふりはらい
ぼくたちはいつ雪になるのだろう、と
子どもじみた思いをこぼし
ただただ、早い冬の王の退場を待ちのぞんでいる


自由詩 冬の虜囚 Copyright 寅午 2013-02-24 11:23:14
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