影法師
月形半分子

影がぐるりと右かしぐ
左手が逃した夕餉の茶碗
右手を掴んで放さぬ恐怖

夜の森は騒々しい
木立はバサバサこすれあい
夜鳥の声はこだまして
奇声をあげてる闇の口

影がぐるりと左にかしぐ
右手が消えた光の中で
左手放さぬ影法師

月高く 森黒く
一本道の迷い道
やじろべえの迷い道
有刺鉄線張り巡らされて
二本のレールと枕木と
こっちが有家駅あっちが内野
どっちがどっち
ここは一本道の迷い道

駐在さんは言いました。
「ここいらの子は
道に迷いますと皆
線路にでますもので
見つけることは
見つかるので
ございます」

カン カン カン
踏み切り 鳴ってた
やじろべえ
どくだみとあざみの花の
咲いていた
あの踏み切りの終列車




自由詩 影法師 Copyright 月形半分子 2013-02-14 00:55:10
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