冷たさは針となって
Mélodie

いつものように鍼を打ってもらった

冷たさが首の後ろから忍び寄って
私の頭を痛ませるんだそうだ
肺を弱らせて
肌を凍みつかせ
私の心にまで風邪をひかせる

たくさんの鍼を体に刺されるとき
先生の重みを感じると言ったら
魂を込めてますからと笑った
守る力を失っている人に
少しでも元気になりますようにと祈るのだそうだ

闊達として
快活に笑う
その指先には
本物の愛情が込められている

私は人に触れられるのが苦手で
知っているのは冷たい指先
私の体という物を利用したがり
私の体という物を支配したがる
冷たく凍みつく指先を覚えている

鍼を打たれるとき
痛みがほとんどないことに驚いて
体の中を何か開かれるような感覚に
畏れと悦びを覚えた
細く貫く鍼と愛情には
あまりにも距離がありすぎるようで
あまりにも同じもので

きっとこの人は
ありあまる富を体と心に大切に守り
それを人に分け与えることで
更に生み出していく人なのだ

凍みついて
凍りついた私の心にも
鍼を刺せたらいいのに

愛されなくてもいいから
愛したいもっと
私は私を愛するための鍼を知りたい

あの指先のように
誰かに触れられる鍼を

今日も私の指は悴んで冷たい針のむしろ


自由詩 冷たさは針となって Copyright Mélodie 2013-02-13 22:14:08
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