呼ぶ声
加藤

遠くから音が聞こえて来て
聞いたことがある音だったのに
そこでは確かに何かがあるのに
風が吹いたら忘れてしまった

そろそろ春が 町にやって来ると
早とちりして 期待している
春の陽の光が目に浮かぶ
四月になれば忙しいだろうか

遠くの音のする方まで
私の声も聞こえるなら
目を開けて届けたい

過去ばかり思って不自由になっていた
いつの間にか始まりも終わりも重なっていた
町ですれ違う人とはすれ違うだけ
重なる瞬間消えるような

悲しいこと 嬉しかったこと そんな思いの全部が
落ち込んでいた時間の隙間を埋めた
動けなくなっても もう何も恨まないよ

また春が来る 思い出が光の中で巡っている
出会えたこと 未来のことが 背中を押してくれた
震えても あきらめても 何度も


自由詩 呼ぶ声 Copyright 加藤 2013-02-12 22:50:09
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