マチが合わない
藤鈴呼

突風が吹き抜ける ビル群
穏やかな 風鈴の音 聞こえない

都会の星空は プラネタリウム
ピンホールから 見上げた 太陽
葉の隙間で 蹲る 虫

羽ばたく時を待って
ランプの下
乱舞する

待って もうちょっと 舞って
口癖の様に 繰り返す 街

厚底レンズで見上げた空に
すじ雲 三つ
繋ぎ合わせたら 何かが出来ると
本気で 信じた

大好きな アイスクリーム
カップと バニラと スプーン
役目が与えられた 雲たちも
一瞬で 表情を 歪め始める

斜めから 覗き込んだから
どんな素材が 隠れて居るのか
見極める事 叶わなくて

まるで 
マチの足りない バッグの様に
身動き 出来ない

穴を 開ける 勇気が無いから
マンホールを 探した

この町は 肌に 合わないし
大きすぎて マチが 足りない

思考回路の全てを 掻っ攫う
一陣の 強風を
待ち侘びるだけ

風も 生きているのだと
知らぬ ままで

風に 成れるかも 知れないのだと
思い付かない

今 見える 全ての景色に
慣れ親しんだ ままで
縫い目を ただ 補強する

ミシンなんて 古いから
今 流行りの 
雑巾縫いでも しときましょうよ

井戸端会議の 声
雀たちに かき消されるのが 通常
燕たちが 逃げ出したのは 本能

今度 羽音が 響いたら
どうぞ 見上げて観て下さい
真っ暗な 世界から
綺麗な 星空を 観察したら

今度は 感じるでしょう
少し マチの 広がった 町を

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自由詩 マチが合わない Copyright 藤鈴呼 2013-02-12 13:54:03
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