残されたもの
千波 一也


ちいさな駅で見送った
あなたの笑顔は
まっすぐでした

こころ細さに折れそうな
わたしの代わりを
つとめるように

あなたの笑顔は
まっすぐでした



とおく、
遮断機の音が鳴り止んで
口からこぼれた
「ありがとう」

直接に、
あなたへ渡せなかった
「ありがとう」



なんにもない青空の
平素なまぶしさは
今なお鮮明です

鮮明に
寂しいものです



手をふるあなたの
かすかな淀み

今ならば少し
みえる気がします

恥じらい混じりのほほえみが
ようやくかなう
今ならば








自由詩 残されたもの Copyright 千波 一也 2013-02-11 17:31:14
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【親愛なる者へ】