秋音
within

なにもない
なにもないからって
なにもない
と書かずにいられない
なにもない頭の中は
欲望も萎えている
干からびているというよりも
深い沼に沈んでいるような

わたしは言わざるをえない
なにもない、と

生まれてくる前のことを
思い出せずに、
頭をねじってみても
なにもなかったと
思わざるをえない

夏のひまわりも
知らずに
冬に生まれてきたわたしは
凍える母の
痛みを知らない
孤独さえも知らずに
泣いていたわたしは
ひとりであることを
春に知った

屈曲した愛情は
わたしを崩壊させた
沼の底から上がった死体は
わたしではなかった
ここにあるから
未来を憂いてしまうなら
いっそのこと
いっそのこと

屈曲した愛情は
わたしを崩壊させた
なにもない白い冬空に
なにもないわたしが
なにもなくなった星の上に
立っている

なにもない
なにもないからって
なにもないとは
かぎらない


自由詩 秋音 Copyright within 2013-02-02 13:25:19
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