羊の手
まきしむ

握るとあたたかい
いとしめやかな香りです

風の音のほか何もしない
草原を共に歩いていました

褐色の山々に向かい
下手な口笛を吹きました

あな、やわらかい、ふにゃふにゃしているから
何度も立ち止まらせ、足をにぎにぎ、

されるの、イヤみたいです
ウェエエエエエエエと鳴き体をぶるっと

でもほかに何もやることがないんよ
無給残業だもんよ ひどいもんさ

父さんの金を食いつぶし生きている

雨が降ってきました
無数の音の重なりが
分厚い層を作り
その中をモーセのような気分で突進

しかし何事も起こらぬ
変わらず草原がどこまでもどこまでも

触れられぬ山々
空が痛々しいほどに響いて


自由詩 羊の手 Copyright まきしむ 2013-02-01 12:34:25
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