白が虹むところ
あおば

           130131


ホワイトボードと黒板との戦いは
遠方の席からも良く見えるとの
力強いボスの一声で黒板の手が挙がる
漢字の勝利ですと僕は囁くように呟いて
今朝も飛び散ったチョークの粉を拭いている
電動クリーナーが唸り
黒板消しも力いっぱい叩かれることもなくなって
イレーサーのことばが口に馴染んだ頃には
子供たちは卒業してゆくのさ
書き連ねる度に飛び散った白墨の粉が咽せる
タバコのようにはきつく臭わないけど
屈託ありげに舞い散って
夕方には教壇を白っぽくしている
最前列の子供たちは上向きに黒板を見あげ
ノートに書き写したりするたびに
なんとなく口が開き
上の方から粉薬のように呑み込まされるのだ
その先は分からない
難解なことばの断片を直接吸い込むのだから知識も染みこむように身に付くのだと言
いたそうな顔を向け
だけど結核になるかもしれないぞと脅す人も居て
黒板とチョークの組み合わせは怖いなと思ったことを思いだす
(論争に負けたホワイトボードは演習室の片隅で小さくなって何処かに貸し出される
のを待っているが、コピー機能が無い旧式だからこの先も出番は多くないだろう)
しかし、マルチメディアに慣れ親しんだこの世紀
古くさくはた迷惑な黒板が威張っていられるのはいつまでだろうかと思いながら
今朝も大教室の黒板の表を丁寧になんども拭う







初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
タイトルは、かんなさん。






自由詩 白が虹むところ Copyright あおば 2013-01-31 02:06:55
notebook Home 戻る  過去 未来