凍結する時間。
元親 ミッド

冷たい風が、街路樹のあたりで、

キョロキョロと挙動不審で。

一瞬でマンションのベランダに駆けあがると

干されていた白い洗濯物を奪って逃げた。



空を眺めるのが大好きな僕は

それをたまたま目撃したのだ。



ところが、風は慌てすぎたのか

奪われた洗濯物が、その手を離れると、

はふり、はふりと舞い落ちた。



それは、1月の青の中で

みるみる視界を塞いでいって

ついに



はふっっ



っと、僕に覆いかぶさってきた。

なんだ?と、それを振り払おうと

覆いかぶさってきたものを手にとってみれば

それは、女性ものの下着であった。



凍りついた空の下で

凍りついてしまった僕の時間。

空にへばりつく霜のような雲と同じく

「それ」をつまんで立ち尽くす僕。



「え?」



っと、それを落とした冷たい風を探して

僕はキョロキョロしたが

そこで目に入ってきたのは、

訝しい表情で、距離をとってすれ違う

OL風の女性だった。



「え?」



これじゃぁ、まるで僕が

ただの変質者か

下着ドロボウに見えるじゃない!?

違う!!違うんだ!!



それを救ってくれたのは

マンションのベランダを乗り出して叫ぶ人だった。

「すいませーん!洗濯物が飛んじゃって〜!!

今、取りに行きますからー!」

声は、男の人だった。

きっと、この下着の持ち主の彼氏さんか、

まあそんなところなんだろう。



マンション下で待っていると

その男性は、すぐに降りてきた。

「ごめんねぇ〜!洗濯物とんじゃって〜。」

彼?の顔を見ると、明らかにメイクの途中で

つけまつげが片方だけついていた。



「あら、おにいさん結構イケメンじゃな〜い!!」



再び凍りつく僕。

1月の冷たい空の下で

その日は、幾度、時間が凍結しただろう?


自由詩 凍結する時間。 Copyright 元親 ミッド 2013-01-30 16:21:20
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