冬を歩く人

寒さは形なく人に触れ、
冷気を感じ身体は縮こまる。
木々は緑を取り外している。
唇から漏れるふんわりとした白は吐息。

生きにくい季節なのに、
たくさんの命が眠る季節だというのに。

なのに、人は、
なのに、人は街を歩いている。
冬の街を歩いている。
冬の街を歩いている。

衣服の厚さに個性は埋もれ、
帽子やマフラー、手袋に隠されても、
目の輝き、頬の朱さ、
手のわずかな仕草は違う。

人それぞれに、人は歩く。

ぬくもりが恋しい季節なのに、
立ち止まり暖まることは簡単なのに。

なのに、人は。
それぞれの理由で、
冬の街を歩いている。
負けてもいいはずのものに負けずに。


自由詩 冬を歩く人 Copyright  2013-01-16 14:38:23
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