くらげ
within
からだという
枷をひきずりながら
とぼとぼと囚人が
やってきた
まどろみのなかで
わたしはうしなわれ
再生してゆく
あかんぼうのように
泣き叫ぶことが
できるだろうか
砂浜から
見えるのは
どこまでも続くようで
うすかげろうのような
向こう岸
新しい地平
地獄か天国か
わたしはやってきた人だ
かえるばしょはない
ひとり
やってくるひとに
わたしのことばをのこす
センチメンタルな
置き手紙
この海をこえたら
もくずとなって
父と出会う
そうして
うしなわれた
家族にもどる
勿忘草が咲く季節
思い出すことができるのは
越境してきたときの
列車の音
車輪の轟音に
わたしはちいさくなり
いつしか夜がきていた
たどりついた今、
再び海を越えようと
かすむ地平を
とらえようと
目をひらいている
時は止まってくれない