ナイロン
瓜田タカヤ
ラードまみれの路上で
不自然に呼吸を操る君の濡れた貝殻
往来する車の振動に身体を刻み下を向く
夜ごと溶かせない太陽に
また明けてしまう日々に
玩具の馬さえ乗りこなせない毎日
君は
「ナイロンって砂糖水の固まりでしょっ」
て言って口にくわえる
狭い部屋で血管の氷が溶けるくらいの時間が
いつまでも続き、
君の存在は刺繍のように
僕の心臓に縫われる
誰も初めから人型の人ではないのだろう
僕たちは無から生まれた無なのに
靴を履くことに靴を履くだけの
力を使わなくちゃだめになってるんだ
君は
「ナイロンって砂糖水の固まりでしょっ」
て言って口にくわえた
そんなラード