あっちにいるひと
佐々宝砂

ちいさなときからいつも
あなたはいました

呼びかけたことも
あったように思います

部活をさぼって
学校の裏の給水塔から
校庭をみおろしていたときも

みんなが塾に行ってしまうので
ぽつん と 図書館で
本を読んでいたときも

いしょたんすの国から
きたのかもしれません
そうではなかったかも
しれません

呼びかけたことが
あったように思います

わたしひとりでは
なかったように思います

でも
なまえをわすれてしまいました
わすれてしまいました

いまはもう
呼びかけることができません


自由詩 あっちにいるひと Copyright 佐々宝砂 2004-12-21 03:27:15
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