正月
たもつ

 
父が釣りをしている
何を釣っているのか聞くと
忘れたと言う
僕も隣に座って糸を垂れる
息子とよくいっしょに釣りに行ったもんだ
という話を皮切りに
父が息子の自慢を始める
小さいころの癖
学生時代の成績
就職したこと
結婚して孫ができたこと
おおむね思い出に間違いはないのに
僕の顔と名前だけがよくわからない
やがて、眠いから帰る、
とそわそわしだしたので
ここが家のベッドであることを告げる
安心したのだろうか、
父はすっかり眠ってしまった
潮風にのっていびきが聞こえる
その間に家族みんなで
正月の準備に取り掛かる
 
 


自由詩 正月 Copyright たもつ 2013-01-03 19:46:57
notebook Home 戻る