12月 雨の夜
あかり
高いヒール靴で アスファルトを鳴らしながら
あたしは歩く 夜の街
アコギを鳴らして叫ぶように唄う少年や
甘ったるい匂いを引きずって笑うお姉さんや
奇抜なアクセサリーを売る露店の外人さんや
それらとは無関係にただ家路に着こうとしている大勢の人達と すれ違う
クリスマスのためのイルミネーション
陽気な鈴の音 笑うサンタクロース
ここではまだ許されている歩き煙草
畜生 降りだした雨のせいで火がつかない
髪が
ピアスが
フェイクファーが 湿ってゆく
コンビニの陰でしゃがんで また火をつけようと試みる
だめだ もうガスがないのかもしれない
雨にびしょ濡れて
暗闇のさらに陰でしゃがんでいるあたしの前を
誰1人立ち止まることなく 過ぎてゆく
あたしはひとりだ
こんなにたくさんの人の中にいても
あたしはひとりだ
満たされることなく空っぽのまま溢れる
何も持ってはいない
あたしなんて「女」という凶器でも弱点でもある特権以外
もうなんにも持ってない
眉毛が マスカラが チークが落ちてゆく
メイクさえ奪ってゆく 夜の雨
唯一残された 小さな胸のふくらみを抱いて
あたしはかがんだまま
闇に同化されるのを恐れた 12月 雨の夜