息蛇魂夢
木屋 亞万

息が降りてこない
空へと昇っていったきり
呼吸が喉に引っ掛かり
上澄みだけが入れ替わる肺

足の指にたまる気だるさ
休日の果実を芯から腐らせていく
引き伸ばされた娯楽が中断するたびに
瞬く間に眠ってしまう

目が覚めても微動だにせず
時計の針も船を漕ぐ

唇と反対方向へ口腔を突き進む
あるはずのポニーテールに結ばれた短髪と
出会うことの無い形而上の冒険譚
有り体に言えば夢を見ている

ヘビの腹の中を歩けば
みるみる小さくなっていく私
溶けていく身体
消化されて栄養になる
私は徐々にヘビにのまれる

馬とはうまくやっていたのに
ヘビのお腹は息苦しい
足元が温かな粘液に包まれて
じんじんと痺れる太股
吸収合併される弱い生き物
ぎゅるぎゅると空気の流れる音は
割とへビーなロックンロール

魂の叫びは魂になったら
当前すんなり出すことができて
夢は魂で見るものなのだと
息に混ざって昇天しつつ
街を見下ろしながら思った


自由詩 息蛇魂夢 Copyright 木屋 亞万 2013-01-02 00:40:30
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