夢の署名 
服部 剛

戦中・戦後を生き抜いた 
ある詩人が世を去った後 
長い足跡のつらなりと 
ひとすじの道の傍らに 
彼が種を蒔いていった花々が開き始める 

今迄の僕は 
別の場所で夢を求めていたが 
世を去った詩人の魂に出逢ってから 
いつのまにか 
野の花の微笑む道に立っており 
前方の遥かな霞に向かって 
どこまでもまっすぐ道は伸びていた 

新たな夢が生まれた日 
何処からか 
世を去った詩人の声が聞える 

「青年よ、詩心を胸に旅に出よ――」 

「はい、いきます」 

その一言だけを 
虚空の天に告げて 
僕は只 
目の前に敷かれている唯一の道を 
無心に歩んでいけばいい 

白紙に描いた夢の設計図を 
懐に入れて―― 

道の傍らに咲く野の花々が 
僕に呼びかける方へ 








自由詩 夢の署名  Copyright 服部 剛 2013-01-01 21:01:38
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