祝詞
HAL

年が明けて何かが変わるかもと
歳の数だけそう想って来たけれど
一度だってそうであったことなんてない

悲しみは悲しみのまま
しんどさはしんどさのまま
ずっと飲み込んできた酸っぱいものが
否応もなく胃からせりあがってくる

街はいつもの気怠さのなかに漂い
神社仏閣の近くはいつもひといきれと大渋滞
TVは観る価値のない中途半端な芸人ばかりの
自分勝手な顔がひきつる笑いもできない宴会芸

あちらこちらで言われる
明けましておめでとうの声も
ぬいぐるみのように中身は
目出度さの代わりのフリーターのアルバイトのよう

郵便ポストに投げ込まれているのも
印刷されたチラシと変わらない年賀状
少し前までは宛先と名前位は手書きだったのに
いまは人の文字に似せたあざとさの筆らしき文字

新聞受けにはニュースはおまけつきで
広告が天然色でデザインとコピーが競う偽善の展覧会
そして印刷された年賀状と同じ誠意のない言葉とタレントの笑み
どうせ誰も見はしないのに誰かが見るだろうとの前提の
好き勝手な押し売りタレントが貸衣装の袴姿と着物姿

この世界のこの国のどこにおめでとうが存在してるんだろうと
朝から酒に酔う目出度い人間は数多くいるというのにと
そんな皮肉な口ぶりをちらりとも気づかれれば誰からも新年なのにと仲間外れ

だからぼくもこうしてあなたに言います

明けましておめでとう

本当に目出度いのかの想いを隠しながらの
何かを疑う
新年明けましておめでとう
何かを欺く
新年明けましておめでとう

でもあなたにだけはこころを込めて言いたいのです
どうか幸多い一年でありますようにと願いながらの
祝詞としての新年明けましておめでとう


自由詩 祝詞 Copyright HAL 2013-01-01 13:55:25
notebook Home 戻る