奇妙なリフレーン
高原漣

寒々しい都会の奥のほうから聞こえてくる一連のメロディ

単調な旋律をくり返すそれは

緑色の憂愁に満ちている

暗く沈んだ湖沼の水に似たトーンで奏でられている

どこの誰かは知らないけれど

壁の向こうから路地のあいだから

聞こえてくる奇妙なリフレーン

運のない男が今日も賭けに負けて酒瓶でごみ箱を殴っている時も

金のない女が昨日も男に逃げられて煙草を神経症的に吸い続けている時も

ずっと聞こえている奇妙なリフレーン

集合的無意識にながれる通奏低音だろうか

いいえ、そんなにぼんやりしたものでなく

はっきりと単調に

聞こえているリフレーン

乾いた街に響く

いびつな音楽

その正体は、誰もが知っていて

誰にもつかめない

それは胸の奥から聞こえている



ある冷えこんだ朝に誰も覚えていない寝床の上で

ひっそりと奇妙なリフレーンが演奏を終えた


自由詩 奇妙なリフレーン Copyright 高原漣 2012-12-14 00:49:19
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