つややかリップ
千波 一也




高層窓には

飼い馴らされた
セレモニー



夜毎
あどけない肯定が
滑らかになる

背筋は
かたいまま



柔らかな囲いは
重たくなって

屋上からの月はなお遠い



一度、
フェンス越しに
口付けておくべきだった

信用ならない約束を
交わすべきだった



ルビー、と発する
唇のぎこちなさ

そこに
研がれそこねた海がある







自由詩 つややかリップ Copyright 千波 一也 2012-12-12 23:13:43
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