そのゆくえ
高瀬

肺にまとわりつく
あらゆる風のにおい
浮遊したまま沁みついて
綯い交ぜの過去が迫りあがる
目を伏せれば目蓋の
こちらにせかいの明滅がみえる
まるで蝋燭を眺めるように

移ろいでいく木の実の行末を
知りながら涼しい顔で
煙を吐き出している
麻痺させるために噛み砕いては
枯れた水を想う
いくらでも

隠した剃刀はやさしい
鈍った精神を研ぐように
滑らせた午前はあたたかい
ぬくもりに失われたものを折り重ね
いつまでも慣れない
結んだはずの小指に目眩う

巡らないはずの季節がめぐるのに
いくつもの夜をこえても
それでも歩いてしまう

その声を捨てても


自由詩 そのゆくえ Copyright 高瀬 2012-12-07 23:44:40
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