そのゆくえ
高瀬
肺にまとわりつく
あらゆる風のにおい
浮遊したまま沁みついて
綯い交ぜの過去が迫りあがる
目を伏せれば目蓋の
こちらにせかいの明滅がみえる
まるで蝋燭を眺めるように
移ろいでいく木の実の行末を
知りながら涼しい顔で
煙を吐き出している
麻痺させるために噛み砕いては
枯れた水を想う
いくらでも
隠した剃刀はやさしい
鈍った精神を研ぐように
滑らせた午前はあたたかい
ぬくもりに失われたものを折り重ね
いつまでも慣れない
結んだはずの小指に目眩う
巡らないはずの季節がめぐるのに
いくつもの夜をこえても
それでも歩いてしまう
その声を捨てても