人は仮面をつけているから美しい
イナエ
昔
会社の中の仮面に疲れた人が
仮面を脱ぎ捨て 本当の自分になろうと
素顔で生きようと 闘争を挑んだ
だが
周りの仮面はそっぽを向いて
会社の素顔から出るむき出しの刃
に素顔を切られ
「空気読めない」とけなされて…
人は仮面をつけて生きているから美しい
毎朝 笑顔で挨拶する隣人
昨夜の焼き肉が匂っていても
鼻をつまむのは仮面の下
いつものように笑顔の仮面で挨拶しよう
子どもの自慢に笑顔で応えた友の言葉に
垣間見えた嫉妬のとげ
だからといって
お互いに仮面のなかを覗き込み
むき出しの心を詮索し合うのはやめよう
気づかぬふりの鈍な仮面で平和な世の中
人中でむき出しになったけもの
長い舌で人の股間をなめ回し
などしないよう眠ったふりの仮面をつけて
いきり立つこころを押さえつけ
菩薩になって座っていよう
人は仮面をつけているから美しいのだ