人は仮面をつけているから美しい
イナエ

 昔 
 会社の中の仮面に疲れた人が 
 仮面を脱ぎ捨て 本当の自分になろうと
 素顔で生きようと 闘争を挑んだ
 だが
 周りの仮面はそっぽを向いて
 会社の素顔から出るむき出しの刃
 に素顔を切られ
 「空気読めない」とけなされて…

人は仮面をつけて生きているから美しい

毎朝 笑顔で挨拶する隣人
昨夜の焼き肉が匂っていても 
鼻をつまむのは仮面の下
いつものように笑顔の仮面で挨拶しよう

子どもの自慢に笑顔で応えた友の言葉に
垣間見えた嫉妬のとげ
だからといって
お互いに仮面のなかを覗き込み
むき出しの心を詮索し合うのはやめよう
気づかぬふりの鈍な仮面で平和な世の中

人中でむき出しになったけもの
長い舌で人の股間をなめ回し
などしないよう眠ったふりの仮面をつけて
いきり立つこころを押さえつけ
菩薩になって座っていよう

人は仮面をつけているから美しいのだ


自由詩 人は仮面をつけているから美しい Copyright イナエ 2012-12-04 21:46:03
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