おっさんのブルース
まーつん

生きるのがかったるい
起きるのがかったるい
そう 何もかもが かったるいんだ

筋の読める映画
見え透いたスローガン
愛は押しつけがましく微笑み
悪は歯を剥いて唸りかけてくるが

俺には少し退屈

時刻表はいつも無表情で
電信柱はいつも直立不動
靴底だけがすり減っていき
不精髭が休日をアオカビ色に彩る

俺はおっさんになった
感性より惰性に突き動かされ
倦怠を破る心がけには
詩心よりも出来心

満員電車で隣に肘をぶつけずに
広げるのだけがうまくなった
大手新聞の斜め読み

世の中を要約して
分かった気になったのはいいが
視界からは輝きが失せて
酒を注いだグラスの底に
かつての少年が溺死していく
自分自身だったはずの少年が

おっさんのブルース
短調マイナーでも長調メジャーでもない
苦味と甘みが程よく入り混じった
どっちつかずの旋律が
これほどよく似合う生き物も 他にいまい

肩の線は 失意の重みでうなだれて
生え際は 譲歩の分だけあとずさる

世の中という悪女の
わがままに付き合い続けて
天国の口座に積み立ててきた
良心の残高は目減りする一方だ
ここらで一発ブルースでも歌わなきゃ

やってられないというわけさ

天使にそっぽを向かれたら
悪魔に愛想をつかれたら
お月さんだけが道連れさ

疲れたおっさんの帰り道
夜空を見上げて口ずさむ

おっさんのブルース

おっさんのブルース♪


自由詩 おっさんのブルース Copyright まーつん 2012-11-25 01:54:08
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