或るジャムと老婦人
灰泥軽茶

信州の秋まつりの露店で買った

ドイツ人の老婦人が作った

珍しい山の果実ジャム

店番をしている佇まいに吸い込まれ

若い頃はさぞかし美しかったに違いない

毎年自分たちだけが食べる分だけ作り

作りすぎた分を売っているそうで

ラベルなんかはドイツに住む妹さんから

送ってきてくれるらしい

すぐきのジャムと迷ったけれど

結局すすめてくれたのを買い

果実の名前を忘れてしまった

ブルーベリーのよりも

さらに酸っぱくて

信州の山で採れた実は

ドイツの老婦人が

ひっそり時間をかけて

コトコト煮て

たっぷり瓶に詰めたであろう

真心がこもり

芳醇深い味であり

色々な風景の匂いが

ふわりとした










自由詩 或るジャムと老婦人 Copyright 灰泥軽茶 2012-11-23 23:17:15
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