お茶を薄める
ヨルノテガム








 黄色を暗がりで見ていると金色に輝く草原の満月だった 牛が骨を売って旅していく 寿司ネタは左からまぐろはまちサーモンの順で並び口穴へ消え失せたが 最後の紅しょうがの味がいつまでも残った 照らされた牛が売って歩いていく 青い湖の水も夜は暗く浮ついた 売っていく牛は白く向こうへ遠ざかって歩調も無く小さく、消えずに小さく距離をひらいた
 彼のカバンから記憶がこぼれ落ちる 彼はカバン色した、顔面に彼自身の記憶を貼り付けて居た・・・・・いつまでも残った、あの草原の中の葉の柔かいのを干して乾かし 雨で煮出した汗のような代物を口へ注ぎ込みたくなる、もうなっている 彼は産まれるとき 卵が先か女性が先かを考えながら風景のなかに転がり落ちてきていた 風のなかに引力の話を聞いた 地平線になびく髪の進路へ記憶はバックボーンバックボーンと季節を移す 燃え上がる花の人たちが境目のない百年の曲がり角や大木の木陰、建物の眠りを醒まさないで通り過ぎる 彼は寿司折の空箱を何かに使えへんかなぁと思って、けど毎度捨てる 彼は夜の牛に喰われる夢を見た その牛は骨を売って旅して歩く 暗闇をゆくぼんやり白いぼんやり遠くなるそれに食む食むと飲まれている 壁画のように眠る記憶の中で 彼は何人もの彼の伝記に聞き入っている それぞれのカバン色した顔は全く鮮明にはわからないが 喉が渇いて アレ飲みたいなと思うが長くミイラ我慢しつづけている

 黄金仮面は幾重もの満月の輝きを甦らせる







自由詩 お茶を薄める Copyright ヨルノテガム 2012-11-13 00:36:20
notebook Home 戻る