『投影』
あおい満月
針穴に髪を通す
布地にぷすぷすと縫いつける度に
疼きだすわたしの心臓
心臓にもぷすぷすと
穴が空いている
踞るうちに
ぷすぷすと血飛沫を上げている胸を
押さえながら刹那に見た幻は
わたしがわたしの心臓を
唄をうたいながら縫いつけている姿
おうたをわすれたカナリヤは
あかいお糸でくるくると
気がつけばわたしの手足は
真っ赤な糸でぐるぐると巻かれている
口には赤い煉瓦をぶち込まれ
呼吸が出来ない
わたしはわたしに
腹部を包丁で刺され
山中の土のなかに埋められる
*
もうすぐ死ぬのに
意識だけがはっきりしている
僅かに覗く陽の光に
書き残した言葉たちが蘇る
しだけが、
書けなかった
わたしは今、
その詩のなかにいる