『投影』
あおい満月

針穴に髪を通す
布地にぷすぷすと縫いつける度に
疼きだすわたしの心臓
心臓にもぷすぷすと
穴が空いている
踞るうちに
ぷすぷすと血飛沫を上げている胸を
押さえながら刹那に見た幻は
わたしがわたしの心臓を
唄をうたいながら縫いつけている姿

おうたをわすれたカナリヤは
あかいお糸でくるくると

気がつけばわたしの手足は
真っ赤な糸でぐるぐると巻かれている
口には赤い煉瓦をぶち込まれ
呼吸が出来ない
わたしはわたしに
腹部を包丁で刺され
山中の土のなかに埋められる



もうすぐ死ぬのに
意識だけがはっきりしている
僅かに覗く陽の光に
書き残した言葉たちが蘇る

しだけが、
書けなかった
わたしは今、
その詩のなかにいる


自由詩 『投影』 Copyright あおい満月 2012-11-07 21:09:24
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