つばめよ、つばめ
そらの珊瑚

引越しの朝は
言い換えれば
旅立ちの朝

窓を開ければ梨畑が広がる小さな部屋であった
季節が巡れば白い花が再び咲くことだろう
春の雪のように
ほんの仮住まいといえ
思い返せば数年の愛着があり
一抹のさみしさはあるけれども
きっと忙しさが忘れさせてくれる
季節が巡れば甘い実を再び結ぶことだろう
秋のぎょくのように

スワロースワローリトルスワロー
君の魂がめざしてとんでいくところは
南の国なんかじゃなかった
もちろん凍えた北の国でもなく
壊れた王子の魂のゆくところ

いらない荷物は捨てていこう
お気に入りの毛布と
一杯のコーヒーを淹れる
朝のためのカップがあればいい
いつか魂だけになったなら
それさえも捨てていこう
そこには朝と夜の境界線さえないと
つばめは言う


自由詩 つばめよ、つばめ Copyright そらの珊瑚 2012-11-02 08:26:25
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