薄紅いに染まりし夕暮れ
石田とわ

    サンダルを履いた踵は
    うっすらと紅く
    右手のビニール袋からは
    ネギの緑がとびだしている
    歩くたびにガサゴソと
    にぎやかなさびしげな
    音をたて
    その後ろ姿は
    夏の夕暮れそのものだった
    
    小路に咲く野の花を
    手折っては
    ぶらぶら歩く姿は
    遊び呆けて家に帰りそびれた
    子供のようで
    髪の短いうなじは日に焼けて
    夏草のようだった
    夕暮れが終わるころ
    ようやく振り返り
    手折った花を要らぬげに
    くれたものだ

    萎れかけた名もしらぬ花を片手に
    家路まで手と手をつなぐ
    サンダルの音も軽く
    隣にあるという
    それは確かな夏の夕暮れで
    ガサゴソとうるさいビニール袋が
    消え入りそうなそのときを
    より確かにしていた

    うっすらと紅みをおびた踵が
    ぶらぶらとゆく姿は
    夏の夕暮れそのものだから
    にぎやかなさびしげな
    夏はいまも続く

















自由詩 薄紅いに染まりし夕暮れ Copyright 石田とわ 2012-11-02 02:24:10
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