もうすぐ まもなく
nonya


もうすぐ間氷期が終わる
と言ってももうすぐは
宇宙サイズの話だから
明日の事かもしれないし
百年後の事かもしれないし
なかなか終わらないかもしれない

まもなく氷河期がやって来る
と言ってもまもなくは
宇宙サイズの話だから
週末に僕が髪を切りに
行ってる頃かもしれないし
僕の玄孫が月へ修学旅行に
行ってる頃かもしれないし
なかなかやって来ないかもしれない

太陽がなんだか素っ気なくて
みょうにツルンとした顔で
愛想笑いばかりしていたら
君の好きな
ひよこ豆とクスクスのルクソール風サラダも
僕の好きな
ラムチョップのロプノール風バーベキューも
じきに食べられなくなるね

地球が流星群に見惚れて
その青くて生真面目な楕円運動を
ほんの少し歪ませただけで
君の好きな
涙目に沁みるモンサンミッシェル風の朝焼けも
僕の好きな
猫背を焦がすグランドキャニオン風の夕焼けも
たちまち凍てついてしまうね

もしかしたら
僕達が無駄に吐き出す
二酸化炭素に満ちた溜息だけでは
もうどうにもならないのかもしれない

もうすぐと言われ続けて
ずっと耐えてきた君のくちびるも
まもなくと言われ続けて
ずっと欺かれてきた僕のみみたぶも
まだまだと思いながら重ねてきた
決して見過ごせない僕達の罪も
マンモスのように氷漬けになって
未来の考古学研究所の床に
放置されるのかもしれない

どちらにしても
もうすぐ君はいなくなる
まもなく僕はいなくなる
と言ってももうすぐもまもなくも
宇宙サイズの話だけど
残念ながらこれだけは確実なんだよな




自由詩 もうすぐ まもなく Copyright nonya 2012-10-27 12:34:51
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