水瀬游

懐には
恐るべき毒を忍ばせておかねばならない
ほんの一滴で
誰しもが息絶えるような毒を
一瓶
忍ばせておかねばならない

コルクで栓をして
いつでも取り出せるようにしておかねばならない

それは決して誰にも使ってはならないのだが
それは墓場まで持っていかねばならないのだが
いつか自分が息絶える日まで
懐に忍ばせて
決して
手放してもならない

いつでも使えるようにしておかねばならない
それはとても大事なことなのだが
だがそれだけ

誰しもが息絶える
恐るべき毒がある
手放してはならないが
決して使ってもならない


自由詩Copyright 水瀬游 2012-10-24 23:16:43
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