耳鳴り
Ohatu


 耳鳴りがする、ずっと遠い。

 静かになったと思い、見渡すと、島国は無くなっていた。

 鳥がやっと一羽、乗ることができるくらいの岩礁が、
 まだゆっくりとした白煙を上げている。

 忘れないで、忘れないで、忘れないで。

 美化された記憶の中で、あなたは自嘲し、あたしは落っこちる。

 あなたはテレビのように饒舌では無いけれど、温かかった。
 あたしはバカだったけど、泣いてばかりだったけど、逃げなかった。

 他はもういい。それだけ。透き通る海の中で。

 残って、残って、残って。

 遠くで、深呼吸の音。切り替わる鼓動。

 また、一人気付いて。またひとつ始まった。

 ずっと遠くが、途方もなく迫ってくる。

 もう、言い訳はできない。
 すべてが、あたしを、剥ぎ取り、裁いてゆく。




自由詩 耳鳴り Copyright Ohatu 2012-10-16 13:57:09
notebook Home 戻る