アヒルのピーッて鳴るやつ
カマキリ

私の指はとても不器用で
目の前にあるものを掴むのに時間がかかる
だから誰かがサッと掠め盗っていってしまったり
のんびりしすぎて消えてしまったりする

ビルの谷間に逆立ちで歩いている
理想郷が多すぎてどれに入ればいいかわからなくなっている
私は結局、たくさんの靴音に引きずられては振り返り
ため息でふくらませたバルーンを山ほどこさえているのだった

ゴミの迷路を突き進んでも答えのない方がよくて
自分で積み上げた蜃気楼に翻弄されるのが日課だ

昨日は雨だった
私は水たまりのほとりに座って
水面の上を、端から端まで、指を走らせている


自由詩 アヒルのピーッて鳴るやつ Copyright カマキリ 2012-10-11 21:54:43
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