誰も知らない
ブルーベリー

吐息だけが白く昇って
何を祈るでもない
ただ
彼女はちょっとした暇潰しに
空き地にどこからか
降ってきた神様が
お配りになられた
愛についての本を開いたのだ
何にせよ説教じゃん
明けかけた仄かな光の照らす先
投げられた石を薄い唇が含む
チークの赤みか寒さかわからない
白い赤子のような頬の肉、その内側。を
そっと噛んだ

神様はどこから降るのかも
知らないのです

線路もアスファルトも歪んでいるのに
神様だけはどこからか来て
どこかへと去っていき
誰も助けてはくれません
ただ遠くから降る騒音を
神様だって信じていたのに

どこへも逃げられなかった者達は告ぐ

断片すら失って
何をしていたのかわからなくなって
呼吸を捨てることさえ忘れた
もうこれ以上は要らないから
崩れたら紙へと溺れたい
死ぬのは怖いね
死ぬときは 物語に沈んで
そのまま浮かび上がらなくなって
腐乱すら残さずに
君になりたかった」

なまやさしい言葉が
恐怖を連れ去り
彼女は疲れた白い顔で
携帯の充電器を差し込み
腐乱し始めていた


自由詩 誰も知らない Copyright ブルーベリー 2012-10-08 15:03:07
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